私の大切な人がまた一人旅立った。
一回り上の従姉に当り、幼い頃から実の姉の様に慕っていた。
寂しさが募るばかりである。
本の好きな人で、小学五年の時に「路傍の石」をくれてオンリーワンの大切さを教えてくれた。
別れにはたいへん多くの方々が訪れた。
自分の仕事にいつも全力で取り組み、常に未来を見詰めながら生涯を貫いた。
草花と詩吟をこよなく愛したその姿勢はいつも凛としていた。
通夜が終わり、その人が好んで時々訪れていたすし屋で一人酒を飲んだ。
嫁いで長年暮らした田舎町で一晩を過ごし、美しい夜明けの山々を眺めた。
この景色を毎日見ながら暮らしたのだ。
もうこの町に来ることもなくなる、と思うと涙が出た。
年末にはいつもその土地で採れる美味しい蕎麦を送ってくれた。
今年は正月にも立派なイチゴを送ってくれてとても美味しかった。
一ヵ月ほど前、働き過ぎる私をいつものように心配してくれて、
「頑張り過ぎないように! 身体だけは大事にするように!」
と優しく、詩吟で鍛えたハッキリとした声を聞いたのが最後となった。
一日も早く新しい事業を軌道に乗せ、墓前に報告に行きたい。
きっと満面の笑みで喜んでくれるだろう。
四十年ほど前、忙しかった私の代わりに昼間プログラムの勉強に行ってくれて、
夜遅くまで私にプログラム教えてくれた言わば会社の創業者の一人だった。
我々が世の中に役立つシステムを開発することを心から喜んでくれた。
これからもその想いを貫いて、また会える日まで私も走り続けようと思う。
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